2022年10月23日

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今さら聞けない クラシコイタリアの魅力

男性ファッションのひとつのスタイルとして有名な『クラシコイタリア』。
言葉は知っていても、「なんのことを指しているか」。
「どんなところが他と違うのか」がよく分からないという方も少なくないと思います。
ここでは、クラシコイタリアの基本概念をはじめ、ブランド、ディテール、歴史、協会との関係など、色々な目線でその魅力をご紹介します。

そもそもクラシコイタリアとは?

「イタリアの最高水準のモノづくりをする集団」

1986年にフィレンツェに結成された『クラシコ・イタリア協会』。
「イタリアの高度な手工業技術」と「真のメイド・イン・イタリー」を守り発展させることを目的にした、メンズファッションブランド16社のみによって構成されていました。
言うなれば、「イタリアの最高水準のモノづくりをする集団」が、クラシコ・イタリア協会であり、それが現在にも続くルーツです。
そもそもクラシコとは、日本語では「クラシック」「古典的な」と言う意味ですが、本来はイタリア語で「最高水準の」「模範的な」「高雅な」という意味を持ちます。
現在クラシコイタリアは、『イタリアのエレガンスと手仕事による伝統的な技術をもった最高峰のファッション』という意味合いに変化して、クラシコイタリアという呼び名が、ひとつの「スタイル」として定着しています。

クラシコイタリア協会の歴史

「独自のハンドメイド技術が発展」

1986年の「クラシコイタリア協会」の発足には、当時のイタリアの背景が大きく関わっています。
イタリアは1860年の統一まで様々な異国の文化が入り込んでいて、中でもナポリは当時から独自のハンドメイド技術を発展させてきた土地。
英国の貴族達はそのナポリでバカンスを過ごす際に、お抱えの職人を連れてきて服を作らせます。
ナポリの優れた職人達は、英国の伝統的な服作りを習得しながら、元々培ってきたハンドメイド技術と独自の美意識を融合させ、さらに進化させていきます。
そうして、伝統的な英国スーツの影響を強く受けながらも、リラックス感がありながらエレガンスを醸し出しだした、「現在のクラシコイタリアスーツ」が生まれたのです。
しかし、その高いハンドメイド技術に注目したヨーロッパ各地から注文が相次ぐことで生産が追いつかなくなり、イタリアも「マシンメイドによる大量生産」に舵をきる事となるのです。
そういった時代の潮流の中、イタリアの伝統的なハンドメイド技術と伝統が失われるのを危惧し、それを後世に残していこうと結成されたのが、クラシコ・イタリア協会なのです。

どんなブランドが加盟?

「世界の最高峰が名を連ねる」

キートンやブリオーニをはじめ、ヘルノ、ルイジボレッリ、イザイア、ロータ、クルチアーニ、ブルネロクチネリ、マーロなど、今尚最高級として名高い、錚々たるブランドが名を連ねたクラシコイタリア協会。
そうして世界のメンズファッション界に多大な影響を与えてきたクラシコイタリア協会ですが、自社の戦略でグローバルな展開を考えるブランド達は、自力で世界に出て成功をつかもうとして、協会を脱退していくのです。
それらのブランドのグローバルな広がりこそ、クラシコイタリアが協会名ではなく、『スタイル』として認知されるきっかけとなるのです。
2000年代になると、インコテックスやボリオリといった、クラシコイタリア協会に加盟していなくとも素晴らしい物作りをするファクトリーブランドが次々に台頭。それが極端な人気を博し、クラシコイタリア的なスタイルとして、日本でも更なる拡大をみせていきます。
そして現在、クラシコイタリア協会には13社が加盟。加盟数が減ったことでクラシコイタリアの衰退が危惧されますが、一概にそうとは言えません。これは協会に加盟しないで自由な物作りをするという、クラシコイタリアを追随するブランドが増えているという、自由でポジティブな動きの表れでもあります。
今では『クラシコイタリア=クラシコイタリア協会』ではなく『クラシコイタリアのスタイル』として広く知られています。
すなわち、近年人気を誇るラルディーニやヤコブコーエンといったブランド達も、協会の加盟に関わらず、その相応しいクォリティから『クラシコイタリアのブランド』として認識されているのです。

代表するデザインとディテール

クラシコイタリアのファッションは、他のスタイルとは大きく異なるデザインやディテールが存在します。
それは、職人の手仕事による柔らかな仕立てに代表されるように、イタリア人の陽気で洒落好きな気質が大きく反映したものです。
そうしたクラシコイタリアを代表するデザインやディテールの一部をご紹介します。

マニカ カミーチャ

『マニカカミーチャ』(イタリア語でシャツ袖の意味)とは、ジャケットの肩付けを、シャツの袖付けの様にギャザーを寄せて袖付けをする技法。手縫いとの組み合わせによって肩回りの可動域を広げ、窮屈が当たり前だったジャケットを柔らかでリラックスした着心地に仕上げたディテールです。
また見た目の美しさも重視するクラシコイタリアらしく、あえて手縫いによる不均等なギャザーに美しさを感じる傾向もあります。手仕事によるこのマニカカミーチャによって、そのジャケットの良し悪しが一目で分かってしまうほど重要なディテールです。

センツァ インテルノ

『センツァインテルノ』とは、ジャケットを成形する肩パッドや芯地を省き、パターンの工夫やアイロンワークを駆使して立体感をもたせた仕立て。まるでカーディガンを羽織るかのような、非常に軽くて柔らかな着心地が特徴です。※イタリア語で、センツァとは「無」インテルノとは「中身・芯」の意味。似たディテールでアンコン仕立てがありますが、これはルーツと目的が違うので『似て非なるもの』と言えます。
アンコン仕立ては、軽さを追求するために副素材を省いた、マシンメイドが主の仕立てです。
センツァインテルノは、「肩パッドや芯地を使用せずに、美しいシルエットを構築するにはどうしたらいいのか」という長年の課題に対し、工夫を重ねた末にたどり着いたハンドメイドの仕立てです。
直接的に軽さを求めて生まれたアンコン仕立てに対し、美しさと技巧を最大限に追い求めた結果に生まれたのが、このセンツァインテルノなのです。

バルカポケット

イタリア語で「舟」を意味する「バルカ」。その名の通り、ジャケットに採用される舟形の胸ポケットを『バルカポケット』と呼びます。立体的な曲線でできている人間の身体に合わせるために考案した湾曲した胸ポケットは、視覚効果によって胸の立体感を表現し、美しい胸元を演出してくれます。特にポケットの下部分まで湾曲していること、手仕事による縫い付けによって生まれる丸みを帯びた生地端が、一層クラシコイタリア感を感じさせます。
最近では色々なブランドがバルカポケットを採用していますが、本来のハンドメイドを用いたものはコストの関係で再現が難しく、デザインとしてのバルカポケットとなっています。

ザンパテグリアート

「鳥足(ザンパテグリアート)」と呼ばれている、独特のボタン付けのこと。白蝶貝ボタンを1穴から3方向に縫い付ける事で、まるで鳥の足跡のような形状になったディテールです。強度が特に高いと言われるボタン留めの形ですが、それだけではありません。そこに手縫いならではのぬくもりと、「こんなデザインも良いでしょ」といった洒落好きなイタリア人らしい遊び心も加味されています。
またボタンの足もしっかり作れることでボタンの開け閉めが容易になる効果も。こういった使い勝手の良さも、手仕事による鳥足の特徴です。
クラシコイタリア好きの中には、洋服の全てのボタンを鳥足で仕上げるという猛者もいるくらい、熱狂的なファンを持つディテールです。※当店リタリオリブロのロゴにも、この鳥足が採用されています。

ドゥエ ボットーニ

イタリア語の「ドゥエ (2個の)」と「ボットーニ (ボタン)」で、台襟部分にボタンが2つ付いたシャツを「ドゥエボットーニ」といいます。襟が高い方がよりエレガントという当時の流れから、襟の型崩れを防ぐ為に、2つのボタンを付け始めたというのが起源とされています。
1990年代後半に起こったクラシコイタリアブームの代表的なディテールでもあるドゥエボットーニ。近年ではクラシコイタリア界では以前ほど展開されていませんが、安価なメーカーでボタンホールの色を変えたドゥエボットーニをよく見かけるようになりました。クラシコイタリアが生んだドゥエボットーニが、今はその『デザイン』としてファッションの裾野にまで広まっているのです。

パンチェリーナ

パンチェリーナとはイタリア語で『腹巻き』の意味。日本では天狗と呼ばれているパンツの持ち出し部分を指し、ウエストを内部から固定するために付いているもの。服地の収まりや下腹部のフィット感が良く、ウエスト周りを内側から自然に美しく見せる為に考案されたディテールです。
日本ではオーダースーツ等で稀に見かけますが、作業工程も複雑で非常に手間がかかるわりに、外からは一切見分けがつかないので、コストをかけてまで作らないブランドがほとんどです。こうした見えない部分にも注力するのがクラシコイタリアらしい所ですね。

セッテピエゲ

セッテピエゲ(sette pieghe)とは、ネクタイの縫製方法のこと。イタリア語でsette(7つの)pieghe(折り目)という名前の通り、通常のネクタイとは違い、シルク生地を7つ折りにしてネクタイに仕立てたものです。 セッテピエゲのタイは、その軽さや柔らかさに加え、Vゾーンのボリュームが増して男性的な立体感が強調され、大人の色気や包容力を感じさせます。
セッテピエゲは普通のネクタイの約2倍の分量のシルク生地が必要で、さらには熟練した職人のフルハンドメイドで仕立てられるため非常に希少性が高いです。いまだにこの伝統的なネクタイを作るブランドはごくわずかで、その職人もどんどん減ってきていることから、これからは更に希少なものになっていくことでしょう。

ノルベジェーゼ製法

ノルベジェーゼ製法は、シューズデザイナーのステファノ・ブランキーニが名付けた靴製法のひとつ。登山靴やスキー靴など、雪道を歩くための堅牢な靴作りに用いられる製法をベースにしたもので、ソールとアッパーが太いステッチで縫い合わされた重厚かつ独特の雰囲気が魅力です。
他国だとノルウィージャン製法とも呼ばれ、パラブーツなどのブランドが特に有名です。2つはほぼ同じ靴製法ですが、ノルベジェーゼ製法はその堅牢性だけではなく、チェーン状になったステッチやコバの張り出しなど、装飾的な意味合いも強い製法です。職人の高い技術を必要とする伝統的な技巧をファッションレベルにまで昇華させたところに、一層クラシコイタリアらしさを感じさせます。

クラシコイタリアの将来

「新しい段階へ」

クラシコイタリアという協会の名前から、そのスタイルへと意味が変わってきたクラシコイタリア。
これからも時代の流れによって、そのスタイルや内容が変化していくことでしょう。
大切なのは、『最高の物作り』、それを得た時の『ときめき』という、クラシコが持つ本質を変えないこと。そして、そして変化を成長と捉え、自らが変わる勇気をもつこと。
変わる部分と変わらない部分をしっかりと持ち続けることで、クラシコはこれからもっともっと成長していきます。
そしてその先には、『新しいクラシコが広がる素晴らしい社会』が待っているはずです。

まとめ

「メンズファッションの最高峰」

いかがでしたでしょうか?
クラシコイタリアについて、理解が深まりましたか?
独自に進化したクラシコイタリアの高い技術や素晴らしいディテールは、足を踏み入れるとまるで『沼』のように抜け出せなくなる方も多くいらっしゃいます。
それだけ魅力的といえるメンズファッションの最高峰が、『クラシコイタリア』なのです。
『イタリアのエレガンスと手仕事による伝統的な技術をもった最高峰のファッション』という意味合いに変化したクラシコイタリア。
協会が求めたように、イタリアの伝統的なハンドメイド技術と伝統を守り後世に残すことは、何としても成し遂げなければなりません。
そして私たちの日本にも、クラシコイタリアに引けを取らない、優れた技術や伝統文化が数多く存在しています。
それらを守り発展させていくことがファッションに携わる者たちの役目であり、ひいては『大量生産・大量消費から脱却し、より環境に良い社会』を作ることに繋がるはずです。
弊社もリユースという形で、素晴らしいクラシコに囲まれた新しいライフスタイルを作ることを目指し、一歩一歩邁進して参ります。